諏訪大社上社の御射山祭は、この祭りが御射山社がある通称「原山」一帯で行われたことから原山様ともいわれている。かつてこの祭りは旧暦の7月26日から30日の5日間、諏訪大社本宮から国常立命(くにとこたちのみこと)と諏訪大神(すわおおみかみ)の2神を御射山社にお迎えし、盛大に執り行われたという。穂屋(ススキで囲った仮屋)を造営して、神官や鎌倉武士などがこれに参籠し、原山一帯の神野(こうや)で狩った獲物を神に供えて、大風が平穏に通り過ぎて五穀豊穣をもたらしてくれるよう祈願した、全国的な神事であった。その後御射山祭は、幾多の変遷を経て、8月26日(上り祭り)、27日(本祭り)、28日(下り祭り)の3日間となって現在に至っている。私の子供時代、1年で一番楽しみな祭りがこの原山様であった。原山様の日には、日暮れとともに着飾った老若男女が湧き出るように部落の辻に集まり、拡声器から大音量で流れる盆踊り歌に憑かれたように踊り狂った。夜風に揺れるススキの穂とともに、ゆく夏を惜しむ原山様の哀調は今でも忘れがたい。
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